Research研究

Research Outline研究概要

当グループでは植物の生産性向上に関わるシロイヌナズナや作物での重要な機能を持つ遺伝子の探索(ジーンディスカバリー)を進めています。とくに植物の量的な向上に関わる生理機能に注目し、環境応答や環境適応、さらに光合成機能に関与する遺伝子、それらの発現を調節する制御因子、シグナル伝達因子などの探索と解析を進めます。同時に、効率の良い遺伝子発現法や遺伝子導入法の開発をすすめ、植物の環境耐性や水利用効率の向上、さらには光合成機能の向上を目指します。これらの研究成果を基に栽培環境の影響を最小限にして最大の収量が得られる作物の開発に関与する基盤技術を開発していきます。

1. 乾燥及びABA応答に関わる制御因子、シグナル伝達因子及び代謝産物の探索と解析

乾燥ストレスやABAによる制御機構を解明するために、転写因子およびシグナル伝達因子に関する研究を進めました。特に、NAC、TCP型転写因子やSnRK2, MAPキナーゼファミリーのプロテインキナーゼについて、その機能やシグナル伝達機構を解析しました。

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ペプチドが根から葉に移動し、アブシジン酸を介して乾燥耐性を高めることを明 らかにしました。
Takahashi F. et al.,Nature(2018)
ペプチドが根から葉に移動し、アブシジン酸を介して乾燥耐性を高めることを明らかにした。図

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シロイヌナズナの小胞体結合型転写因子、bZIP17とbZIP28が正常な根の伸長に必須であることを明らかにしました。
Kim JS. et al., Plant Physiol (2018)
シロイヌナズナの小胞体結合型転写因子、bZIP17とbZIP28が正常な根の伸長に必須であることを明らかにした図

2. 環境ストレス耐性、 水利用効率の向上に関する分子育種への展開とコムギ、イネなどの作物への応用

ABA の合成・分解 酵素遺伝子の発現制御や、ABAトランスポーターに関して研究を行い、ABAの細胞間でのシグナル伝達、個体レベルでの情報伝達に関して研究しました。
また、このABAトランスポーターが乾燥耐性に加えて水利用効率向上に寄与することを明らかにしました。

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シロイヌナズナガラクチノール合成酵素を使って干ばつに強いイネを作り、乾燥圃場での実証栽培に成功しました。
Selvaraj MG. et al., Plant Biotechnol J (2017)
シロイヌナズナガラクチノール合成酵素を使って干ばつに強いイネを作り、乾燥圃場での実証栽培に成功

3. 葉緑体機能の制御に関する遺伝子解析と気候変動下での光合成機能向上への展開

環境ストレス応答における活性酸素やポリアミンの機能に関する研究を進めました。 特に新規のポリアミントランスポーターの単離と機能解析をいました。また、多くのsORF遺伝子を同定し、それらが植物機能発現に関わることを明らかにしました。
葉緑体機能制御に関する図

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光合成反応を担う光化学系Ⅱ複合体の分子集合に関与する新しい因子を発見しました。
Myouga F. et al., Plant Physiol (2018)

4. 変異体リソースと表現型解析技術を利用した新規遺伝子の探索 (BRCとの連携研究)

植物の水環境コントロールと画像解析を自動で行う表現型解析システムを開発し、乾燥ストレスや水利用効率の評価法の開発を行いました。また、国際作物研究機関との共同研究を進めて、イネ、コムギでの乾燥耐性獲得に関わる分子育種研究を進めました。

5. 比較ゲノム科学による作物への応用展開を目指した基盤研究

約2000の葉緑体タンパク質の核コード遺伝子の変異体の収集と光合成や環境ストレス応答に関する表現型解析を進めてデータベースを公開しました。